”堀川復活”の切り札 木曽川導水事業がスタート
名古屋市の中心部を南北に横断し、伊勢湾に注ぐ堀川。もともとは、江戸時代に尾張藩の建築資材の運河として、開削されたのがルーツの人工河川です。1960年代から1970年代の高度経済成長期には著しく悪化し、腐った卵のような強烈な悪臭を放つなど、”死せる川”となりましたが、下水道の整備等を進めることで少しずつ水質が改善してきました。そんな中、先月(2026年7月)からは、さらなる水質改善を目指して、木曽川導水事業がスタートしました。水質改善の切り札となる木曽川導水事業の概略と、今後の課題についてまとめました。
”死せる川”復活の切り札 木曽川導水事業とは?
木曽川導水とは、水源を持たず水が淀みがちな堀川に、文字通り木曽川のフレッシュな水を流し込むことで、堀川の水質浄化を図るものです。事業は先月(2026年7月)7日から3年間暫定的に実施され、毎秒最大400リットルという大量の水が堀川に放流されています。
大量の水の放流によって、堀川の水が希釈されるだけでなく、微生物の活動が活発になることで、有機物の分解も加速することが期待されています。過去2007年から3年間にかけても木曽川や庄内川から導水したことがあり、そのときも上流付近などで一定程度水質が改善するのが確認できたということで、今回の導水事業についても大きな期待が寄せられています。
導水放流地点”猿投橋”付近の様子は?
放流は堀川の上流、北区の猿投橋のたもとから行われます。

周辺では透明度の高い水が流れているのも確認できます。


あくまで”暫定” 今後の課題は?
堀川の浄化に対しては高い効果が期待できる木曽川導水ですが、今回の事業はあくまで3年間の暫定事業で、恒久的に実施するには高い壁があります。名古屋市が木曽川にもつ「水利権」はあくまで、水道水など”利水”を目的としたもので、川の浄化を目的としたものではありません。今回、堀川の浄化を目的に木曽川の水を利用するのは、あくまで特例。9月から10月のアジア・アジパラ競技会の国際イベントを前に観光客をきれいな堀川で迎える”大義名分”のもと、流域の他自治体などの了承を取り付け、”暫定措置”として特別に認められたものです。
恒久的に導水事業を行うには、名古屋市が別の新たな水源を確保した上で国に提示し、新しい水利権の許可を得る必要があります。過去には岐阜県の徳山ダムから水を引く導水路事業の構想もありましたが、事業総費は2,270億円(名古屋市の負担分は300億円)にのぼるともいわれました。わかりやすく言えば「堀川の浄化のために多額の”税金”を投入することに市民の理解を得ることができるか?」という課題があります?
生活用水としての貴重な水を、恒久的に堀川の浄化という目的だけに使うことに市民や周辺自治体の理解が得られるのか?実現にはまだ高いハードルがありそうです。
魅力あるウォーターフロントの形成へ
下水道の整備などが進み最悪だった水質が徐々に回復する中で、堀川沿いも徐々に変化がみられています。

街の中心部の納屋橋付近では、遊歩道やオープンカフェなどが設けられました。
悪臭が漂い、かつては川沿いの建物は川に背を向けるように建設されていましたが、徐々に川側に窓が設置される店なども増えてきました。

遊歩道にテーブルを設置する店も増えてきました。

大阪の中之島や道頓堀、福岡の中州など都市の中心部のウォーターフロントは大きな街の魅力になります。
今回の木曽川導水でさらに堀川の水が浄化されて街の魅力が高まり、将来的に恒久的な導水事業への機運が盛り上がることを期待したいです。