謎多き鉄道路線 「城北線」の現状と将来は!?
「城北線」はJR東海の完全子会社「東海交通事業」が名古屋市などで運営する鉄道路線です。開業は1991年12月。30年の歴史がある路線です。ただ正直、名古屋市民でも城北線の存在を知らない人は多いのではないでしょうか?それもそのはず、一日の利用客はわずか520人(2017年度)と極端に利用客が少ない知る人ぞ知る鉄道路線なのです。
極端に利用客が少ない鉄道ですが、沿線にほとんど人が住んでいないというわけではありません。清須市の琵琶島駅から名古屋市の北部地域をとおり、春日井の勝川駅までの11.2㎞の区間を結んでいます。沿線は住宅地が広がっており、むしろ沿線人口が多い路線です。
ではなぜ利用客が極端にするかいのか?それはやることなすこと何もかもが中途半端な”残念な路線”だからと言わざるをえません。始発駅は枇杷島駅。JR東海道線下りの名古屋駅の次の普通駅です。始発をあと一駅のばして名駅にすれば、利便性は大幅にあがると思われますが、なぜか始発は「枇杷島駅」のまま長年運営が続けられています。
そしてさらに中途半端なのが終点の勝川駅です。JR勝川駅は名古屋のベットタウンとして一日平均で35,000人を超える人が利用する中央線の主要駅の一つですが、城北線の勝川駅はこのJR勝川駅に乗りいれてはおらず、JRの勝川駅から南西方向に500メートルほど先にポツンとあります。
あと少し路線を伸ばしJR勝川駅に直結させれば利便性は飛躍的に向上する上、JR線との相乗効果も期待できることは明らかだけに中途半端な形で放置されている現状に疑問は深まるばかりです。
都市部を走る路線にも関わらず電化もされておらず、一時間に一本、一両編成のディーゼルカーが走るだけです。
利便性を向上させるため愛知県や沿線自治体(清須市、名古屋市、春日井市)でつくる「城北線整備促進協議会」はJR東海や東海交通事業に対し毎年のようにJR勝川駅との接続や、枇杷島駅から名古屋駅への直接乗り入れを要望しているようですが、JR東海側は「多額な費用がかかり、現在の城北線の利用者などを考えれば、乗り入れの実現性は極めて低い」とつれない返事を繰り返すばかりのようです。
開業以来、毎年赤字を垂れ流し続け放置されているようにみえる「城北線」ですが、なぜ今後も改善する可能性が極めて低い路線を廃線にせず運営し続けているのかがさらに疑問として湧いてきます。城北線は全線が複線の高架線。電化がされていないという以外はかなり高規格の路線で、一見この路線を維持するメリットはまるでないように思います。
この城北線。元々は旧国鉄時代に貨物線の一部として整備が進められましたが、モータリゼーションの進捗による鉄道貨物の需要減を受け、建設途中で計画がとん挫していました。国鉄時代、鉄道の新線は日本鉄道建設公団(鉄建公団)が建設し、完成したら、国鉄が数十年かけて賃借料を払い、建設費の回収が完了したら国鉄に線路を譲り渡すという独特のルールがありました。民営化はしたものの城北線についてはこの独特のルールが継承されていて、JR東海が2032年まで毎年40億~50億の賃借料を鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧日本鉄道整備公団)に払い、子会社の東海交通事業に運営をさせているようです。つまりJR東海にとって駅や線路は2032年まで”借り物”なのです。さらにJR東海が電化への整備事業など新たな投資をすると、賃借料があがる仕組みのようで、2032年までは自由に設備投資ができないようです。正直「なんだかなぁ?」という仕組みではありますが、2032年以降は完全にJR東海グループの所有物となり設備投資が自由となります。
JR勝川駅のホームには、ホームの前に路線が敷かれていない謎の空間もあります。今後、おそらく城北線の線路がこの場所に乗り入れるよう用意されているのでは?と考えざるを得ません。
また城北線が名古屋駅に乗り入れるとすると、場所的にあおなみ線の名古屋駅と直結するのではないかと思います。今後、あおなみ線が城北線と一体運営となり「勝川発、金城ふ頭行」という列車ができるというのもただの空想ではない気がします。
融通の利かない旧鉄建公団の些末なルールの影響で、2032年まで開発を待たなければならないというのは、なんとも歯がゆいばかりですが、”縛り”がはずれ、設備投資が進めば、沿線が大きく変貌することになりそうです。